引越しのポイント

家財道具の引越しそのものも大変な作業ですが、水槽の引越しはさらに大変です。
自力で引越しするつもりなら、相当骨を折る作業になることを覚悟しなければなりません。
魚が泳いでいる水槽をどのように引越ししたら良いのか。
ポイント毎にそのノウハウをお教えします。

水槽引越しのポイント

水槽引越しのポイント

通常の家財道具だけの引越しであれば、引越し前日までに荷物をまとめ、当日引越し業者に運んでもらうか、自分でトラックに積み移動するだけです。
しかし、そこに魚が泳いでいる水槽がプラスされると、引越しの難易度は格段にアップしてしまいます。水槽を引越しする際のポイントをまとめると次のとおりです。

● 前日のエサ切りなどで、移動中の水質悪化を防ぐ。
● 移動中の水温変化に注意する(クーラーボックスやホッカイロを用意する)。
● 1/2程度の飼育水、ろ材(バクテリア)も生かして運ぶ。
● 生体移動に必要な容器や道具、酸素ガス等を確保する。

以上の点に気をつけるために、さまざまな準備や工夫が必要になります。引越し当日だけでなく、それ以前の準備、
あるいは、その後のケアも同じくらい重要です。そのため「いつ、何をするべきか」スケジュールを立てることをお勧めします。

スケジュール立て

可能ならば、家財道具の引越し日に水槽移動は避ける

引越し当日は水道やガスの連絡立会い、不動産屋さんとの手続き、挨拶回りなど何かと忙しいものです。60cmクラスの水槽でも1人で作業したら搬出に2時間、搬入設置に3時間がいいところです。一人暮らしの場合、同時引越しは不可能に近いです。できれば、家財道具とは別の日に水槽の引越し日を設定した方が、落ち着いて安全に引越しできると思います。

前日までの作業

ヒーターやクーラーを使っている場合は水温を常温に近づける

ヒーターやクーラーで温度管理をしている場合は、引越し作業・移動中に、急激に水温が変化してしまうことが考えられます。1週間程度をかけて飼育水の水温を徐々に常温に近づけるように調整しておくと当日の変化を和らげることができます。ヒーターやクーラーを完全に切ってしまうのではなく、せいぜい5℃程度の上下でその季節に合わせた水温にしておきます。
熱帯魚はゆっくりな変化には順応できますが急激な温度変化には非常にストレスを感じやすいです。移動中は水量が少ないため温度変化も非常に早くなります。よって真夏や真冬などの水温と外気温度に差がある季節の移動には保温材などの使用もお勧めします。

ヒーターやクーラーを使っている場合は水温を常温に近づける

水換え

熱心なユーザーなら週に1回程度の頻度で水換えを行っていますが、かなりの長期間放置状態の人も多いのではないでしょうか?
水槽の引越しではどうしても新しい水を入れる必要があるので、予め魚を水換えに慣れさせておくことが望ましいと思います。
引越日の1ヵ月前に1/4、2週間前に1/3、1週間前に1/2水換えを行っておくと、引越し当日の水換えストレスがかなり軽減されるでしょう。

エサ切りをすることで水質の悪化を防ぐ

移動中の狭い容器の中で魚が糞をしてしまうと、水質は急激に悪化します。これを防ぐために、引越日の前後1日程度は、エサを与えずに絶食して過ごさせます。生体の種類にもよりますが、魚はエサを3~4日与えなくても十分元気に過ごすことができます。引越し前後にエサを切る程度なら、なんら支障はないでしょう。

引越し当日の作業

1/2程度の飼育水、ろ材(バクテリア)も生かして運ぶ

引越し先での水槽の立ち上がり(水質安定)を助けるため、現在の水槽の飼育水を持っていくことをお勧めします。ホームセンター等で10Lあるいは20Lの広口ポリタンクが売られているので、それを利用するのが良いでしょう。生体を運ぶ水も含め、持っていく水量は水槽全体の1/2を目安にします。魚は網ですくわれ、車に揺られ相当なストレスを受けます。そこに追い打ちをかけて全く新しい水に入れられたらどうでしょう?弱ってしまいますよね?少しでも今の水環境を復元できればそれに越したことはないということです。
また、ろ材は水に浸した状態だと酸欠によりバクテリアが死滅してしまいます。外部式ろ過等は内部の水はすべて捨てて空の状態で運びましょう。

生体を運ぶための容器

通常は、「ビニール袋」に飼育水と生体を入れ、「酸素ガス」を注入して輪ゴムでパッキングし、「発泡スチロール箱」に入れて持ち運ぶという手段をとります。プロショップのように大型の酸素ボンベを用意する必要はなく、アウトドア商品として売られているスプレー缶に入った酸素をビニール袋などの空間部分に噴射することで対応できます。
近所への引越しならば、「バケツ」などの適当な容器に生体を入れ、「乾電池式のエアポンプ」でブクブクして運ぶことでも問題ないでしょう。
また、乾電池式のエアポンプや酸素ガスの代わりになる商品として「O2ストーン」というのがあります。いわゆる酸素の出る石です。安価で電源の必要もありませんが、商品パッケージには淡水用と注意書きがされているので海水魚には使えないかもしれません。
なお、魚が起きていると酸素をよく消費するので、ビニール袋は新聞紙で包むか、箱の蓋をしめ暗くすることで魚の生代謝を抑えることができます

生体を運ぶための容器

水槽を運ぶための梱包

本格的な水草水槽の場合は水と生体だけ抜いて、ソイル(又は砂利)と水草は植えたままの状態で運ぶ方法が手間がかかりません。この時の
ポイントとしては、第一に水は限りなくくこと。そうしないと輸送中の揺れで底砂が大きくずれたり、寄ったりしてしまいます。第二に
水草は濡れた「新聞紙」や「キッチンペーパー」で覆い、さらに水槽の開口部は全て「ラップ」で密封することです。これは乾燥を防ぐためです。
水槽自体は「毛布」があると何かと便利です。ソイル敷きの水槽はかなりの重量です。車の荷台に置いてから滑らせる時などに毛布が有効に働きます。

水温維持のためのアイテム

「発泡スチロールの箱」は必須です。また冬場は「ホッカイロ」、夏場は「保冷剤」(アイスノンや凍らせた500mlペットボトル等)が必須アイテムになります。ホッカイロの場合は発熱に酸素を消費するので発泡スチロールを密封してしまうと発熱が止まってしまいます。発泡スチロールの蓋の角の方に空気の出入りができるように500円玉くらいの穴を開け、その穴を塞ぐように内側からホッカイロを貼り付けます。
引越し先の気温を事前に調べておき、夏の高気温時には保冷材を、冬の低気温時には保温材を入れ、輸送中の生体に与えるダメージを最小限にとどめるようにしましょう。

生体のパッキング

まずは一番始めにきれいな状態の飼育水を生体移動用ビニール袋に取り分けます。併せてポリタンクにも飼育水をとります。次に魚を掬うのに邪魔となるレイアウト素材(流木や岩など)を取り除き、網で生体を掬います。
パッキングは個体ごとに慎重に行います。厚手のビニールを水漏れのないよう二重にし、その中に十分な量の飼育水を入れます。輸送中に酸欠で生体の状態が悪くなることのないよう、十分に酸素を入れて袋を膨らました状態にし、輪ゴムで頑丈に袋を閉じます。馴染みのSHOPにて魚を袋詰めにしてもらう方法も一つ。

器具類を取り外す

照明、フィルター、ヒーター、エアポンプ等の周辺器具を全て取り外し、割れやすいものはプチプチ等で梱包し、運び出します。
注意点として、ヒーターはOFFにしてからしばらく水中に放置して熱が冷めてから取り出して下さい。また、フィルター内の水はバクテリア保護のためすべて捨ててください。ただし1日以上の長期間の輸送になる場合は、バケツなどの容器の底にエアーストーンを設置した状態でろ材を入れて飼育水で浸し、エアーレーションしておきます。これなら1週間程度置いても問題ありません。(エアーレーションしないと、酸欠になってバクテリアが死滅してしまいます)

水槽の水を限りなく抜く

底砂は基本的に水槽に入ったままの状態で運びます。底砂が輸送中の揺れや振動で大きく動いてしまうのを防ぐため、飼育水は限りなく抜きましょう。サイフォンの原理(水は高いところから低いところへ落ちる)を利用し、ホース1本あれば水は簡単に抜けます。フィッシュポンプなど便利なグッズもあります。

引越し後のケア

エサはまだ与えないこと

引越し先に到着し、水槽に魚を放して、やれやれ…というところです。さっそくエサをあげたいところですが、引越し前と同じく、やはり1日間は絶食させてください。その後生体の様子を見ながら徐々に与えてやり、数日かけて元のエサやりペースに戻します。

ところで、一般の引越し業者は?

一般の引越し業者が運送してくれる場合、水槽は全くの空になっている事、底床や水草、魚は完全にパッキングされ絶対水漏れしない事が条件となります。もちろん業者毎に取り扱いが違うので、引越しの見積りをとる際に確認した方が良いでしょう。
しかし、食器やタンスの中身を業者がパッキングしてくれるサービスがある場合でも、水槽までは面倒を見てくれません。また、完全にパッキングしてあったとしても中身が「生き物」となるとトラックに乗せてくれない業者が多いのが現状です。